外国人の健康保険はどうしたらいいの?に社労士がお答えします。【詳細編】
日付:2016年8月4日
労働保険に続き、社会保険のスペシャリスト・社会保険労務士の先生に、健康保険について説明してもらいました!
外国人の健康保険については、ざっくりと「外国人従業員の健康・年金保険はどうしたらいいの?にお答えします。」で
説明していますが、もっと詳しく知りたい!という方は、こちらのページを確認してみてください。
社会保険とは?
社会保険は狭い解釈では「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」をまとめたものです。(広い解釈では労働保険も含みます)
法人は必ず加入します。個人事業主で従業員が5人未満の会社以外は加入しなければなりません。
会社で働く外国人労働者は、適用除外条件にあてはまらない限りは、加入しなければなりません。
社会保険に加入できない人
健康保険 | 厚生年金保険 | |
2カ月以内の期間を定めて雇用される人(所定の期間を超えて引き続き雇用されたときはその日から加入します) | ○ | ○ |
臨時に雇用される人で日々雇い入れられる人(1か月を超えて引き続き雇用されたときはその日から加入します) | ○ | ○ |
所在地が一定しない事業所に雇用された人(各地を移動するサーカスや大衆演劇団) | ○ | ○ |
季節的事業に雇用される人(当初から継続して4カ月を超えて雇用される場合は加入します) | ○ | ○ |
臨時的事業の事業所に雇用される人(博覧会、展示会のような定期的な事業) | ○ | ○ |
パートタイマーなどの短時間労働者で正社員に比べ1日又は1週間の所定労働時間が4分の3未満かつ1か月の所定労働日数が4分の3未満の人
(※H28.10からは要件が変わります) |
○ | ○ |
個人の事業所で、常時雇用している人数が5人未満の場合 | ○ | ○ |
個人事業主 | ○ | ○ |
国民健康保険組合の事業所に雇用される人など | ○ | |
公務員、共済組合加入者 | ○ |
従業員ご自身が、病気をしないから、日本で年金をもらう予定はないから、などの理由で
加入するかしないかを選択することはできません!
会社の社会保険の加入の手続きは「新規適用届」を年金事務所に提出して行います。
従業員が加入する場合、退職する場合など資格を喪失する場合も同様です。
保険料
保険料は標準報酬月額に保険料率を掛けた額を会社とご本人とで半分ずつで負担します。
ご本人負担分は毎月の賃金から控除します。
標準報酬月額は給与の月額の範囲によって月額と等級を決定します。
また、賞与についても支給額によって決められた保険料を支払うこととなります。
協会けんぽが公開している保険料額表からご自分の保険料が一目でわかりますのでご参照ください。
※保険料額表はこちら→
※標準報酬月額は加入時と毎年4.5.6月の賃金を平均して決定し、9月の賃金から適用します。
また、賃金の増減により随時保険料が改定になることがあります。
健康保険について詳しく説明します。
お仕事中、通勤途中以外のプライベートでのケガや病気、出産、死亡の際に給付が行われる制度です。
①健康保険の種類
会社で加入する健康保険によっては各種要件が異なっています。
- 協会けんぽ(全国健康保険協会)
主に中小企業で働いている方が加入している健康保険です。
以前は国が主体で運営していましたが、全国健康保険協会が設立されてからはこちらに移行して運営しています。
このページでは、協会けんぽの制度をご紹介しています。
- 組合健保
常時700人以上の従業員がいる事業所や同種・同業で3,000人以上従業員が集まる事業所が、
厚生労働大臣の認可を得て設立した健康保険業務を行う組織です。
主に大企業で働いている方は健康保険組合に加入しています。
ご自身がどこの健康保険組合に加入しているか確認し、制度の内容はその健康保険組合にお問い合わせください。
②被扶養者について
健康保険はご本人だけではなく、扶養している家族や親族にも保険給付が行われます。
母国に住んでいるご家族も要件を満たしていれば、扶養家族として認定される場合があります。
被扶養者として認定されるためには、ご本人がその方の生計を維持している(養っている)ことが必要です。
対象のご家族の収入の要件が、同居している場合と同居していない場合とで異なります。
同居している | 同居していない | |
収入要件 | 対象ご家族の年間収入が130万円未満(対象ご家族が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、ご本人の年間収入の2分の1未満である場合 | 対象ご家族の年間収入が130万円未満(対象ご家族が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。 |
【対象となる被扶養者の範囲】
※「同一世帯」とは家計を同じくし、一緒に生活を営んでいることが条件です。「同居」と同じ意味ではないのでご注意ください。
↑全国健康保険協会HPより抜粋
③給付の種類
どんなとき | 給付の種類 | 給付の内容 | |
ケガや病気をしたとき | 健康保険証で治療を受けるとき | 療養の給付 | 治療そのもの |
入院時食事療養費 | 入院した際の食事の給付 | ||
入院時生活療養費
家族入院時生活療養費(被扶養者の場合) |
65歳以上の人が療養病床(要介護者が入院する施設)で生活療養(食事代・住居費)に要した費用 | ||
保険外併用療養費
家族療養費(被扶養者の場合) |
保険診療と保険外診療が例外的に認められる場合において、発生した費用を給付 | ||
訪問看護療養費 | 自宅療養している人が訪問看護ステーションの訪問看護・介護サービスを受けたときにかかった費用 | ||
立て替え払いをしたとき | 療養費 | 保険診療を受けられず自費で受診したときにかかった費用 | |
高額療養費 | 医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合にその部分が払い戻される | ||
高額介護合算療養費 | 医療保険と介護保険の自己負担額が基準の額を超えた場合にその超えた部分を支給 | ||
緊急時に移送されたとき | 移送費
家族移送費(被扶養者の場合) |
病気やけがで移動が難しい患者が医師の指示で一時的・緊急的必要があり移送された場合(転院の場合など) | |
療養のため休んだ時 | 傷病手当金 | 病気やケガのため会社を休んだ日が連続3日間続いた場合、4日目以降について支給 | |
出産したとき | 出産育児一時金
家族出産育児一時金(被扶養者の場合) |
ご本人または被扶養者が出産したときに1児につき42万円給付 | |
出産手当金 | ご本人が出産のために会社を休み、賃金が支給されないときに支給 | ||
死亡したとき | 埋葬料(費) | ご本人が死亡したときに、埋葬を行った家族に埋葬料として5万円支給。家族がいない場合は埋葬を行った人に埋葬費として支給 |
【退職後も受けられる給付】
- 1年以上健康保険に加入している人が傷病手当金または出産手当金を受けている場合、資格喪失後も給付を受け続けることができます。母国に帰国した場合も引き続き受給できます。
- 上記に該当する人、または上記に該当する人が3カ月以内に死亡したとき、資格喪失してから3カ月以内に死亡した場合は埋葬料(費)が支給されます。
- 資格を喪失する前日まで1年以上健康保険に加入していた人が資格喪失日から6カ月以内に出産した場合には出産育児一時金が支給されます。
【外国にいる被扶養者の保険給付】
要件に該当すれば、外国にいる被扶養者の医療費も健康保険で給付されることが可能です。
ただし、全額自費で立て替えてから領収書などを日本に送付してもらい、払い戻すこととなります。
その治療内容が日本の健康保険法で規定されているものと一致しているものでないと認められません。
手続きとしては「療養費支給申請書」に「診療内容明細書」「領収明細書」「領収書の原本」を
それぞれ日本語で翻訳したものが必要となります。
振込先の口座は必ず被保険者(ご本人)の日本国内の銀行口座を記入するようにしましょう。
出産一時金についても同様です。
④一部負担割合について
健康保険の保険給付は全額支給されるわけではありません。
決められた一部負担割合に応じた金額を支払い、残りが保険給付されることとなります。
年齢 | 負担割合 |
小学校入学前 | 2割 |
小学校入学以後70歳未満 | 3割 |
70歳以上 | 2割(現役並み所得者は3割) |
※平成26年3月31日以前に70歳になった被保険者等(誕生日が昭和14年4月2日から昭和19年4月1日までの方)については、
引き続き一部負担金等の軽減特例措置の対象となるため、平成26年4月1日以降の療養に係る一部負担金等の割合は1割のままです。
⑤退職後も加入できる制度
退職までに2か月以上の健康保険に加入している期間があった場合、ご本人の希望があれば、
原則として退職後2年間、加入している健康保険を継続することができます。
ただし、保険料は全額自己負担となります。退職後20日以内に手続きしなければなりません。
<この記事を書いてくれた社労士さん>
社会保険労務士 築城 由佳 先生 (ついき社会保険労務士事務所 代表)
TEL:06-6442-3118(営業時間:9:00~18:00)

神戸大学国際文化学部卒業後、大手電機メーカーにて海外営業・マーケティング業務を経験。
育児休業中に行政書士資格を取得し、2015年12月に独立。
開業当初から入管業務(ビザ申請)に特化し、現在では年間500件以上の相談、100件以上の申請を行う。