外国人の年金はどうしたらいいの?に社労士がお答えします。【詳細編】

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外国人の年金はどうしたらいいの?に社労士がお答えします。【詳細編】

日付:2016年8月9日

年金手帳

労働保険に続き、社会保険のスペシャリスト・社会保険労務士の先生に、健康保険について説明してもらいました!

外国人の年金については、ざっくりと「外国人従業員の健康・年金保険はどうしたらいいの?にお答えします。」

説明していますが、もっと詳しく知りたい!という方は、こちらのページを確認してみてください。

 

日本の年金制度

日本の公的年金は国民年金と厚生年金の2階建てとなっています。

企業で働く人は厚生年金に加入しますが、自営業者など厚生年金に加入できない人は国民年金(基礎年金)の加入のみとなります。

厚生年金に加入している人は自動的に国民年金にも加入していることとなります。

2階建て年金

厚生労働省HPより

 

第3号被保険者の制度について

日本の公的年金の被保険者(加入者)は以下のように分類されます。

被保険者の種別 第1号被保険者 第2号被保険者 第3号被保険者
職業 自営業者・学生・フリーターなど 会社員:公務員など 専業主婦(主夫)など
加入する年金制度 国民年金のみ 国民年金:厚生年金 国民年金のみ

 

20歳以上60歳未満の被扶養配偶者(扶養している奥様、旦那様)は保険料を支払うことなく、国民年金の加入者となることができます。

 

 厚生年金給付の種類

老齢給付

厚生年金の被保険者期間があって、老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たした(原則として25年)方が65歳になったときに、

老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金が支給されます。

 

年金額は会社で受けていた収入によって異なります。

入社してから退職するまで、転職を繰り返している場合はその在職している期間を通算して、

その間に支払われた給与(標準報酬月額)、賞与(標準賞与額)を平均した額をもとに、年金額を計算します。

 

障害給付

厚生年金に加入している間に病気やケガで、障害が残ってしまった(障害1級・2級に該当した)場合に

国民年金の障害基礎年金に上乗せした障害厚生年金が支給されます。

障害1級・2級に該当しないレベルの障害が残ってしまった場合は、障害3級に該当する場合もあります。

その際は障害厚生年金のみが支給されます。

初診日(その障害の元ととなる病気やケガで初めて病院に行った日)から5年以内に症状がこれ以上治らない固定した状態となり、

障害3級に該当しないレベルの軽い障害については、障害手当金として一時金が支給されます。

 

※障害厚生年金を受給するためには障害基礎年金を受けられる要件を満たしている必要があります。

(加入中の保険料納付期間によって決まります)

 

遺族給付

【遺族厚生年金が支給される要件】

a厚生年金に加入しているご本人が亡くなった時

b加入中の病気やケガが元で初診日から5年以内に亡くなった時

c障害厚生年金(障害等級1・2級)を受けられる人が死亡した時

d老齢厚生年金を受けるために必要な資格期間を満たしている人が死亡した時

以上のいずれかの要件にあてはまるご本人のご遺族に遺族厚生年金が支給されます。

遺族厚生年金が受給できる遺族の優先順位は以下の通りです。

順位 対象の家族 要件
配偶者 子のある配偶者は遺族基礎年金も併せて支給。

子のない30歳未満の妻は5年間のみ。

夫は55歳以上(支給開始は60歳)

18歳到達年度の年度末を経過していない人または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級に該当する人で結婚していないこと。

遺族基礎年金も併せて支給

父母 55歳以上(支給開始は60歳)
18歳到達年度の年度末を経過していない人または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級に該当する人で結婚していないこと。
祖父母 55歳以上(支給開始は60歳)

 

※遺族厚生年金を受けるためには遺族基礎年金を受けられる要件を満たしていることが必要となります。

(加入中の保険料納付期間によって決まります)

 

適用除外となる外国人

厚生年金保険は外国人のみ加入しなくてよい場合があります。

・海外の会社に籍を残したまま日本国内の会社へ出向していて、給与を全額海外の会社が支払っている場合。

(日本国内の会社から一部でも給与が支払われる場合は厚生年金保険に加入します。)

・労働者ご本人の母国と日本との間で「社会保障協定」が締結されていて、原則5年以内の見込みで出向などにより来日する場合。

社会保障協定について

社会保障協定とはそれぞれの国の社会保障の制度に加入することによって生じる保険料の2重負担の防止、

保険料の掛け捨てとならないように社会保障協定に加入している国の年金制度に加入しているとみなして、

年金を受給できるようにするための制度です。

 

協定の対象となる社会保障制度は国によって異なりますので、母国が社会保障協定を結んでいるのか、

母国の制度はどうなっているのかを確認しておくことが大切です。

年金だけではなく、医療保険、労災・雇用保険についても確認しておきましょう。

尚、社会保障協定は企業で働く人だけではなく、自営業者にも当てはまります。

 

【社会保障協定を結んでいる国の一覧】

相手国 協定発効年月 期間
通算
二重防止の対象となる社会保障制度
日本 相手国
ドイツ 平成12年2月 ·         公的年金制度 ·         公的年金制度
イギリス 平成13年2月 ·         公的年金制度 ·         公的年金制度
韓国 平成17年4月 ·         公的年金制度 ·         公的年金制度
アメリカ 平成17年10月 ·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         社会保障制度(公的年金制度)

·         公的医療保険制度(メディケア)

ベルギー 平成19年1月 ·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的労災保険制度

·         公的雇用保険制度

フランス 平成19年6月 ·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的労災保険制度

カナダ 平成20年3月 ·         公的年金制度 ·         公的年金制度
※ケベック州年金制度を除く
オーストラリア 平成21年1月 ·         公的年金制度 ·         退職年金保障制度
オランダ 平成21年3月 ·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         雇用保険制度

チェコ 平成21年6月 ·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         雇用保険制度

スペイン 平成22年12月 ·         公的年金制度 ·         公的年金制度
アイルランド 平成22年12月 ·         公的年金制度 ·         公的年金制度
ブラジル 平成24年3月 ·         公的年金制度 ·         公的年金制度
スイス 平成24年3月 ·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         雇用保険制度

ハンガリー 平成26年1月 ·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         雇用保険制度

イタリア 発効準備中 ·         公的年金制度

·         公的雇用保険制度

·         公的年金制度

·         公的雇用保険制度

インド 発効準備中 ·         公的年金制度 ·         公的年金制度
ルクセンブルグ 発効準備中 ·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的年金制度

·         公的医療保険制度

·         公的労災保険制度

·         公的雇用保険制度

フィリピン 発効準備中 ·         公的年金制度 ·         公的年金制度

(日本年金機構HPより)

 

加入する社会保障制度は就労状況や派遣期間によって異なります。

就労状況 派遣期間 加入する社会保障制度
協定相手国の事業所からの派遣 5年以内と見込まれる一時派遣 協定相手国の社会保障制度
上記派遣者の派遣期間が予見できない事情により5年を超える場合 原則、日本の社会保障制度

両国の合意が得られた場合には、協定相手国の社会保障制度のみ

5年を超えると見込まれる長期派遣 日本の社会保障制度
日本での現地採用 日本の社会保障制度

(日本年金機構HPより)

 

社会保障協定により日本の社会保障の加入を免除するための手続き

来日前に、母国にて社会保障に加入していることを証明するための「適用証明書」を交付してもらっておきましょう。

(審査によっては交付されない場合があります。その際は日本の社会保障制度に加入することとなります。)

※「適用証明書」を発行できる各国の機関はこちらをご確認ください。

 

来日後は、日本で働く会社に「適用証明書」を提出します。

会社は年金事務所から提示を求められた場合、または調査の際に外国人従業員が

日本の社会保障制度に加入していない理由を求められた場合にはこの「適用証明書」を提示します。

 

脱退一時金について

日本に短期間在留した外国人で、日本の公的年金制度に加入していた期間が

老齢年金を受給できる期間を満たさなかった場合に、保険料の掛け捨てを防止するため、

支払った保険料の一部を返金する制度です。

 

支給要件は以下の通りです。

  • 厚生年金、または国民年金に6カ月以上加入していたこと
  • 日本国籍を持っていないこと
  • 日本に住所がないこと
  • 年金(老齢、障害)を受給することができる人ではないこと

 

【国民年金の脱退一時金の額】

保険料納付済期間 受給金額
6カ月以上12カ月未満 46,770円
12カ月以上18カ月未満 93,540円
18カ月以上24カ月未満 140,310円
24カ月以上30カ月未満 187,080円
30カ月以上36カ月未満 233,850円
36カ月以上 280,620円

※最後の保険料納付月が平成27年度の場合の金額です

 

【厚生年金の脱退一時金の額】

平均標準報酬額×支給率 [(保険料率×1/2)×下記表の被保険者期間月数に応じた数]

※平均標準報酬額とは以下の額を合算した額を厚生年金に被保険者期間(厚生年金に加入していた期間)月数で割った額です。

・平成15年4月より前の被保険者期間の標準報酬月額×1.3

・平成15年4月以後の被保険者期間の標準報酬月額+標準賞与額

※保険料率は、最終月が1月~8月の場合は前々年の10月、9月~12月の場合は前年の10月時点のものを使用します。

保険料納付済期間
6カ月以上12カ月未満
12カ月以上18カ月未満 12
18カ月以上24カ月未満 18
24カ月以上30カ月未満 24
30カ月以上36カ月未満 30
36カ月以上 36

 

脱退一時金の請求方法

出国後2年以内に「脱退一時金裁定請求書」にパスポートの写し、年金手帳を添付して日本年金機構に郵送で提出します。(電子申請もあり)

※詳細はこちらをご覧ください。

 

※脱退一時金を受給すると、それに関わる公的年金の加入期間はなかったものとみなされます。

社会保障協定を締結している国であっても加入期間の通算はされなくなってしまいますのでご注意ください。

 

年金に加入していた外国人従業員が母国へ帰国する際は、

会社は脱退一時金を受給可能かどうか確認してあげるようにしましょう。

 

介護保険

高齢者の介護を社会全体で支えることを目的とした制度です。

たとえ日本で老後を過ごす予定がない外国人でも以下の要件に該当する人は加入しなければなりません。

  • 40歳以上の人
  • 住民基本台帳に記載されている人
  • 在留資格が3カ月を超える人

 

40歳以上65歳未満で、以下に該当する人は加入しません。

  • 日本に長期滞在で住民票を置かない人
  • 障害者施設など適用除外施設に入所されている人
  • 在留資格3カ月以下の人

上記に該当する方は「介護保険 適用除外等該当・不該当届」を提出することで介護保険料を徴収されなくなります。

 

【介護保険の加入者の分類と保険料の納付方法】

分類 要件 保険料徴収方法
第1号被保険者 日本の市町村に住所がある65歳以上の人 老齢年金からの天引きなど
第2号被保険者 日本の市町村に住所がある40歳以上65歳未満の健康保険加入者 社会保険料として給与などから天引き

 

介護保険料は40歳のお誕生日の前日が属する月から対象となります。

手続きは特に必要はなく、健康保険に上乗せして徴収されることとなります。

65歳のお誕生日前日が属する月からは、市町村から老齢年金などから天引きされますが、こちらも特に手続きは必要ありません。

 

外国人も要件に該当すればもちろん介護保険のサービスを受けることが可能です。

詳細についてはお住いの近くの市区町村役場、包括支援センターにお問い合わせください。

お近くの包括支援センターはこちらで検索できます。

 

<この記事を書いてくれた社労士さん>

社会保険労務士 築城 由佳 先生 (ついき社会保険労務士事務所 代表)

TEL:06-6442-3118(営業時間:9:00~18:00)

 
監修
行政書士法人GOAL 柏本 美紀
神戸大学国際文化学部卒業後、大手電機メーカーにて海外営業・マーケティング業務を経験。
育児休業中に行政書士資格を取得し、2015年12月に独立。
開業当初から入管業務(ビザ申請)に特化し、現在では年間500件以上の相談、100件以上の申請を行う。
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