入管法に違反するとこうなる!不法滞在と罰則
日付:2016年1月20日
不法滞在、不法就労、オーバーステイ…
こうした言葉を聞いたことがある人は少なくないはず。
このページでは、不法に日本に滞在する外国人に関わった企業に対する罰則や
外国人本人に対する措置について説明していきます。
1.不法就労
以下のような場合が不法就労に当たります。
・在留資格で決められた活動以外の活動を行う場合
<例>「技術・人文知識・国際業務」ビザを持つ外国人労働者が工場内で流れ作業をしている
・ビザを持たずに不法入国して働く場合
・在留資格の更新をせずにそのまま働く場合
<例>「短期滞在」ビザで入国し、期限が切れても日本に残り働く場合
このような不法就労を行う外国人の存在は、風俗・治安などの分野で問題を引き起こす場合もありますが、
一方で低賃金での労働を強いられたりして外国人が被害にあうケースもあります。
そのため国は不法滞在している外国人の取り締まりを強化してきました。
その甲斐あって、在留期間を超えて日本に滞在(不法滞在、オーバーステイ)している外国人の数は年々減ってきています。
それでも左の統計を見ると平成27年1月時点で6万人となかなかの数字ですね。
こうした不法滞在や不法入国などを排除するため、退去強制制度や出国命令制度などの制度が定められています。
2.不法就労助長罪
オーバーステイしている外国人本人だけでなく、事業主側にも課せられる処罰があります。それが不法就労助長罪です。
例えば、外国人に不法就労活動をさせたり、外国人に不法就労活動を行うための会社をあっせんしたりすると、
3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(又は併科)に処せられます。
退去強制を免れるために不法入国者をかくまう行為もNGで、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
(営利目的であればさらに重く、5年以下の懲役及び300万円以下の罰金)
外国人を雇用する場合は、自社を守るためにも在留資格の種類や有効期間など入念にチェックしましょう。
3.退去強制
「退去強制」とは、日本政府が好ましくないと認める外国人を日本の領域外に強制的に退去させることです。
一般的には、以下のような場合が該当します。
これらに該当する場合は、原則として退去強制手続を受け、日本から出国することになります。
該当者 | 具体例 |
不法入国者 | 有効なパスポートなどを持たずに日本に入国した者、または他人のパスポートなどを使って入国した者 |
不法上陸者 | 上陸の許可を受けずに日本に上陸した者 |
偽造・変造文書を作成・提供した者 | 不正に上陸・在留するために偽造のパスポートや在留カードを作成したり提供した者 |
資格外活動 | 在留資格で決められた活動以外の活動を行い報酬を得た者 |
不法残留者(オーバーステイ) | 在留期間の更新をせずに有効期間が過ぎた後も日本に滞在している者 |
刑罰法令の違反者 | 窃盗や傷害などの刑に処せられた者 |
売春関係業務の従事者 | 売春や周旋、勧誘などに従事した者 |
不法入国や不法上陸をほう助した者 | 外国人を入国させる目的で虚偽申請をしたり、偽造文書を発行した者 |
退去命令違反者 | 退去強制令書が発行されているにもかかわらず日本から出国しない者 |
退去強制手続は以下の流れで慎重に行われます。
退去強制手続に入ると必ず出国させられるかというと必ずしもそうではなく、
日本での生活歴や家族状況などが考慮されて日本への在留が特別に許可される場合もあります。(在留特別許可といいます)
また、退去強制により帰国した場合、その後5年間は日本へ入国することができません。(一部の場合は10年間)
<退去強制手続きの流れ>
5.出国命令制度と出頭申告
退去強制に該当する者の中で不法残留者(オーバーステイ)には特別な制度があります。それが「出国命令制度」です。
出国命令制度とは、日本に滞在する不法残留者に自主的に出頭させて出国させるための制度です。
出国命令により出国した外国人には、以下のようなメリットがあります。
・身柄を収容されることなく出国できる
・通常、帰国後は入国拒否期間が5年間(場合によっては10年間)となるところを1年間に軽減される
<出国命令制度の対象となる条件>
①出国の意思をもって自ら入国管理署に出頭したものであること
②不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと
③窃盗罪等の一定の罪により懲役又は禁錮に処せられたものでないこと
④過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと
⑤速やかに本邦から出国することが確実に見込まれること
出国命令制度に該当し出頭しようとする場合は、パスポートと在留カードを持って指定の地方入国管理局へ出頭します。
実際に出国する日程は、出頭した日から2~3週間たってから。
スケジュールはケースによって異なるので、航空券は入国管理局の指示を受けてから購入をしましょう。
ただし、出国命令制度を利用した場合、日本から出国することが前提です。
不法滞在者の中には日本に家族がいるなど日本から離れたくない事情がある方もいます。
この場合、出国命令制度の対象であったとしても、出頭申告していったん退去強制手続に入り
その中で在留特別許可を求めることができます。
しかし、在留特別許可は法務大臣の裁量的な処分とされているので、100%認められるものではありません。
不許可になればもちろん出国しなければならないうえ、5年間は日本に入国することさえできません。
出国命令制度を利用するか、在留特別許可を申請するか、慎重な判断が求められます。
不法滞在となってしまっていて在留特別許可を申請したい!という方は一度当事務所にご相談ください!
神戸大学国際文化学部卒業後、大手電機メーカーにて海外営業・マーケティング業務を経験。
育児休業中に行政書士資格を取得し、2015年12月に独立。
開業当初から入管業務(ビザ申請)に特化し、現在では年間500件以上の相談、100件以上の申請を行う。