外国人従業員の海外転勤なら「企業内転勤」ビザ
日付:2016年1月8日
外国にある事業所の外国人従業員に日本の事業所に海外転勤してもらうときは、
就労ビザの一つである「企業内転勤」ビザが該当します。
このページでは、企業内転勤ビザの要件や企業内転勤ビザを取得するときの必要書類について説明していきます。
企業内転勤ビザの要件
企業内転勤ビザでは、次の要件をすべて満たす必要があります。
<企業内転勤ビザの要件>
①外国にある事業所の職員が、日本の事業所に転勤して期間を定めて勤務すること
②日本で行おうとする業務が「技術・人文知識・国際業務」ビザの活動に該当すること
③外国にある本店(支店その他事業所)で「技術・人文知識・国際業務」ビザの活動に該当する業務を
継続して1年以上行っていたこと
④日本人と同等額以上の報酬を受けること
1つずつ見ていきましょう。
①外国にある事業所の職員が、日本の事業所に転勤して期間を定めて勤務すること
「期間を定めて」とは、日本の事業所での勤務が一定期間に限られている、ということです。
無期限で日本に滞在することは想定されていません。
そのため、ビザの申請には、転勤命令書や辞令書を添付しますが、そこに派遣期間を明記する必要があります。
とはいうものの、
「企業内転勤ビザの有効期限が切れそうだけど、もうちょっと日本にいてほしい!」
という場合、在留状況や勤務先の状況などに問題がなければ
ビザの更新は許可されるのであまり神経質にならなくても大丈夫です。
②日本で行おうとする業務が「技術・人文知識・国際業務」ビザの活動に該当すること
転勤をする外国人が、「技術・人文知識・国際業務」ビザで決められている活動に該当する業務を行う必要があります。
例えば、IT技術者、SE、機械設計者、建築関係の設計者、マーケティング、経理、法務、翻訳・通訳、語学講師など。
いわゆる単純労働や肉体労働、サービス業などを行う場合は許可されません。
※「技術・人文知識・国際業務」ビザにくわしく知りたい方はこちら→
ただし、次の場合は、企業内転勤ビザとは異なるビザが適用されます。
- 海外転勤する者が経営または管理を行う場合 →「経営・管理」ビザ
- 海外転勤する者の所属先が外国の政府関係機関の場で、業務内容が「外交」または「公用」の活動に該当する場合
→「外交」ビザまたは「公用」ビザ
③転勤の直前に、外国にある事業所で「技術・人文知識・国際業務」ビザの活動に該当する業務を継続して1年以上行っていたこと
企業内転勤ビザでは、「技術・人文知識・国際業務」ビザとは違い学歴や実務経験は問われません。
その代わり、在籍期間が条件となります。
海外転勤する外国人は、海外転勤の直前に、1年以上継続して勤務していたことが必要です。
業務内容は、「技術・人文知識・国際業務」ビザの活動に該当する業務であればいいので
必ずしも日本での業務内容と同じ、または関連する業務である必要はありません。
④日本人と同等額以上の報酬を受けること
下の<企業内転勤ビザで気をつけたい報酬額の決め方>でくわしく説明しています。
必見!企業内転勤ビザの「転勤」はここまで含まれる!
通常「転勤」とは同一会社内での異動をさしますが、企業内転勤ビザの場合、より広い範囲まで該当します。
ここでは企業内転勤ビザで呼ぶことができる海外法人の種類を紹介していきます。
企業内転勤ビザに該当する「転勤」のいろいろ
企業内転勤ビザでは次のような会社間での異動が該当します。
・親会社・子会社間の異動
・本店(本社)・支店(支社)・営業所間の異動
・親会社・孫会社間の異動、子会社・孫会社間の異動
・子会社間の異動
・孫会社間の異動
・関連会社間の異動
【海外転勤のイメージ図 】
関連会社間の異動について、補足しておきますね。
関連会社とは、資本参加や役員派遣などによって、他の会社から支配を受ける会社のことです。(子会社を除く)
具体的には、関連会社の議決権を20%以上を所有していることなどが基準としてあります。
が、要するに、単なる業務提携レベルでは関連会社とは認められない、ということです。
また、関連会社間の異動の場合、親会社⇔親会社の関連会社、子会社⇔子会社の関連会社
の場合のみに限定されるので注意してくださいね。
企業内転勤ビザで気をつけたい報酬額の決め方
企業内転勤ビザを取得して海外転勤してもらう場合、外国人従業員に支給する報酬額は日本人と同等額以上である必要があります。
目安は最低でも月額20万円前後で、現地通貨基準ではなく、日本円で計算してください。
地域や業種・職種にもよりますが、日本の大卒の初任給の平均が月額20万円ちょっと、
ということから考えてもこれくらいが妥当でしょう。
(出典:厚生労働省「平成26年賃金構造基本統計調査(初任給)」 全国・全産業 男女計 200.4千円)
また、給与は現地企業が支払ってもOKですが日本円に換算したときに上記の基準を満たしておく必要があります!
企業内転勤ビザと技術・人文知識・国際業務ビザの違い
企業内転勤ビザと技術・人文知識・国際業務ビザは日本で行うことができる活動内容は同じですが、
ビザの要件に違いがあります。
<企業内転勤ビザと技術・人文知識・国際業務ビザの主な要件の比較>
企業内転勤ビザ |
技術・人文知識・国際業務ビザ |
|
雇用期間 | 派遣・出向期間は一定の期間
(ただし、ビザの更新は可能) |
無期限 |
勤務先 | 転勤した特定の勤務先に限る | 転職可(同ビザの活動範囲内に限る) |
学歴・実務経験 | 不要 | 要 |
在籍要件 | あり(直前1年以上) | なし |
いちばんの違いは、企業内転勤ビザでは、学歴・実務経験がいらない、という点です。
企業内転勤ビザの場合、学歴にこだわらず本当に実力・経験のある外国人に日本で勤務してもらうことができます。
逆に、学歴の要件は満たしているけど在籍してまだ1年も満たない、
という人を海外転勤させて日本の会社で働いてもらいたい場合は、たとえ海外転勤者であっても
企業内転勤ビザは適用されません。
(この場合は技術・人文知識・国際業務ビザの取得が可能な場合もあります。)
企業内転勤ビザを取得するための必要書類
企業内転勤ビザの場合、雇用企業を規模などによりカテゴリー分類しています。
どのカテゴリーに属するかによって必要書類が違ってくるのでまずは自社がどのカテゴリーなのか確認しましょう!
カテゴリー1 | ●上場企業
●保険業を営む相互会社 ●日本または外国の国・地方公共団体 ●独立行政法人 ●特殊法人・認可法人 ●日本の国・地方公共団体の公益法人 ●法人税法別表1に掲げる公共法人 |
カテゴリー2 | 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上ある団体・個人 |
カテゴリー3 | 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の源泉徴収税額が1,500万円未満の団体・個人 |
カテゴリー4 | 1~3のいずれにも該当しない団体・個人(新設法人) |
海外の事業所で働く外国人従業員を日本の事業所に転勤させる場合
海外にある事業所で働く外国人従業員を日本の事業所に転勤させる場合、在留資格認定証明書の交付手続きが必要です。
申請に必要な書類はカテゴリー1・2と3・4で大きく異なります。
カテゴリー1・2の場合は、必要書類は3・4と比べるとかなり簡略化されます。
【カテゴリー1・2の必要書類】
カテゴリー1(上場企業) |
カテゴリー2 (前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上ある団体・個人) |
以下のいずれかの文書
① 四季報の写し ② 上場していることを証明する文書 ③ 設立許可書 |
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) |
≪共通資料≫ |
|
在留資格認定証明書交付申請書 | |
返信用封筒 | |
申請人の顔写真 | |
専門士または高度専門士の称号をもっている場合は、それを証明する文書 |
【カテゴリー3・4の必要書類】
カテゴリー3
(前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,500万未満の団体・個人) |
カテゴリー4
(新設法人) |
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の
法定調書合計表(受付印のあるものの写し) |
以下のいずれかの資料
① 外国法人の源泉徴収に対する免除証明書 ② 給与支払事務所等の開設届出書の写し ③ 直近3カ月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書 ④ 納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料 |
≪共通資料≫ |
|
在留資格認定証明書交付申請書 | |
返信用封筒 | |
申請人の顔写真 | |
専門士または高度専門士の称号をもっている場合は、それを証明する文書 | |
以下のいずれかの資料
① 同一法人内の転勤の場合:転勤命令書の写し、または辞令等の写し ② 異なる法人に転勤する場合:労働条件明示書 ③役員等(労働者に該当しない)の場合: (ア)会社の場合・・・役員報酬を定める定款の写し、 または役員報酬を決議した株主総会の議事録の写し (イ)会社以外の場合・・・地位(担当業務),期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書 |
|
以下のいずれかの資料
① 同一法人内の転勤の場合:日本の事業所(外国法人の支店)の登記事項証明書(その他外国法人が日本に事業所を有することを明らかにする資料) ② 日本法人への出向の場合:出向元(外国)と出向先(日本)の出資関係を明らかにする資料 ③ 日本にある外国法人への出向の場合: (ア)当該外国法人の支店の登記事項証明書 (その他当該外国法人が日本に事務所を有することを明らかにする資料) (イ)当該外国法人と出向元の法人との資本関係を明らかにする資料 |
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履歴書 | |
在職証明書(直前1年間の業務内容、地位、報酬を明示) | |
以下のいずれかの資料
① 勤務先の会社案内書(パンフレット等) ② 勤務先の登記事項証明書 |
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直近の年度の決算文書の写し(新規事業の場合は事業計画書) |
(注)状況によっては上記の書類以外の書類が必要な場合があります。
自社で働く外国人従業員の企業内転勤ビザを更新をする場合
在留期間更新手続きが必要です。
カテゴリー1 |
カテゴリー2 | カテゴリー3 |
カテゴリー4 |
以下のいずれかの文書
① 四季報の写し ② 上場していることを証明する文書 ③ 設立許可書 |
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) | ||
住民税の課税証明及び納税証明書 | |||
≪共通資料≫ |
|||
在留期間更新許可申請書 | |||
パスポート 原本提示 | |||
在留カード 原本提示 | |||
申請人の顔写真 |
(注)状況によっては上記の書類以外の書類が必要な場合があります。
神戸大学国際文化学部卒業後、大手電機メーカーにて海外営業・マーケティング業務を経験。
育児休業中に行政書士資格を取得し、2015年12月に独立。
開業当初から入管業務(ビザ申請)に特化し、現在では年間500件以上の相談、100件以上の申請を行う。