いちばんメジャーな就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」
日付:2016年1月7日
外国人が日本で働くためには、就労ビザが必要です。
ただし、就労ビザは申請したからといった必ずおりるとは限りません。
このページでは就労ビザをとるための要件や取得方法、取得にかかる期間と費用など、
外国人の採用を考えているあなたの疑問点にお答えします!
あなたの会社で就労ビザを取得できるのか?
就労ビザは申請すれば絶対に取れる、というものではありません。
「外国人を採用することにしたけど、うちの会社で就労ビザってとれるんかな?」と疑問に思っているあなたに
まずは、就労ビザをとるための要件を説明していきます!
就労ビザをとれる業務ととれない業務があります
「就労ビザ」といっても職業によってビザの種類が異なります。
就労ビザと呼ばれる、就労が認められているビザは17種類。
その中で、会社(または個人事業主)が外国人従業員を雇用する場合は、
ほとんどが「技術・人文知識・国際業務」というビザが該当します。
(ちなみに、我々行政書士は頭文字をとって「技人国(ぎじんこく)」と呼んでます。)
※その他の就労ビザについて知りたい方はこちら
経営・管理ビザのすべてがわかる!許可をとるための条件・必要書類・法改正による変更点
外国人のシェフ・パティシエを雇用したい!と思ったら読むページ
「ホテルで通訳スタッフとして雇用したい」
「ホームページ制作会社でSEとして雇用したい」
「建設業者で施工管理として雇用したい」
「英会話学校の講師として雇用したい」
「金属加工業者でNC旋盤やCAD/CAMをやってもらいたい」
これらぜーんぶ「技術・人文知識・国際業務」ビザが該当します!
しかし、業務内容によっては、この「技術・人文知識・国際業務」ビザを取れない場合もあるんです。
就労ビザ(=「技術・人文知識・国際業務」ビザ)をとるためには、
専門的な知識や技術が必要な仕事をしてもらう必要があります。
肉体労働、単純作業、サービス業は基本的にNGです。
工事現場の作業員、工場の製造ライン、ホテルなどの清掃業務、飲食店での接客は就労ビザがとれない代表的な仕事です。
最近、外国人観光客が増えていることもあり、飲食店のホールスタッフで外国人を採用したい
という相談がめちゃめちゃ多いのですが、残念ながら就労ビザはおりません。
反対に、就労ビザが該当する業務は、例えば、SE(システムエンジニア)、設計業務、経理、翻訳・通訳、…などなど。
このように、就労ビザをとるためには、まずは外国人従業員の方にどんな業務を担当してもらうのか、が重要になってきます。
外国人従業員の経歴によっては就労ビザがとれない場合もあります
就労ビザをとるためのもう一つの重要な条件が、外国人従業員の方の経歴です。
まずは、雇用したい外国人従業員の方の最終学歴を確認してください。確認するポイントは2つ。
- 最終学歴が大学卒業以上かどうか?
- 大学で専攻していた学部・学科は何か?
就労ビザをとるためには、原則、最終学歴が大学卒業以上であることが必要です。
(大学を卒業していなくてもいける場合もあるので後述します)
大学卒業であれば日本でも海外でもどちらでも大丈夫です。また、日本の専門学校を卒業している場合もOKです。
ただし、「大学」といっても、外国の教育課程は日本と違うので、外国人の方が「大卒です!」と言っていても、
日本でいう「大学」に該当しない場合があります。
そのため、卒業証書を見てみて「学士」、英語なら「Bachelor」、フランスは「Licence」と書かれているか確認してください。
もちろん、「修士」(「Master」)、「博士」(「Doctor」)でも問題ありません。
外国人従業員の方が大卒以上であれば、次に、専攻していた学部・学科を確認してください。
就労ビザでは、「大学(専門学校)で学んだことを活かせる仕事かどうか」が審査の重要なポイントになるので、
あなたの会社でやってもらう予定の仕事と大学で専攻していた学部・学科が関連していることが求められます。
例えば、SEをやってもらいたいなら、大学で情報科学部を卒業していたり、プログラミングに関する科目を履修している必要があります。
建設業の施工管理をやってもらいたいなら、大学で建築・建設関係の学部を卒業していないとダメです。
いくら関連する資格をもっていても、大学を卒業していなかったり、
仕事と関係ない学部を卒業している場合は、就労ビザはとれません。
ただし、翻訳・通訳業務や語学スクールの講師は違います!
外国語を必要とする仕事をしてもらう場合は、大学で専攻していた学部との関連性は問われません。
大学を卒業していれば、どの学部でも大丈夫なんです。
なので、台湾の大学で工学部を卒業した方が、日本で通訳業務をする場合でも就労ビザの要件を満たします。
ただし、専門学校卒業の場合は要注意です。
最終学歴が日本の専門学校の場合は、専門学校で学んだこととの関連性が必要です。
要するに、最終学歴が日本の専門学校の場合は、専門学校で日本語や通訳などのコースを専攻していた人でないと、
翻訳・通訳業務で就労ビザはとれないということになります。
「大学を卒業していないと、絶対に就労ビザはとれないんですか?」とよく聞かれますが、
答えは「大学を卒業していなくてもとれる場合もあります」です。
学歴の要件を満たしていない場合でも、職歴の要件を満たしていれば就労ビザがとれます。
職歴の要件とは、「日本で行う仕事に関連する業務を10年以上行っていたこと」です。
例えば、あなたの会社で外国人従業員の方に電子部品の設計をやってもらうとします。
その外国人従業員の方の最終学歴は高校卒業だったとしても、これまで別の会社で
電子部品の設計業務に関連する仕事を10年以上経験している場合は、就労ビザを取得できる可能性があります。
実際に、就労ビザの申請をするときには、10年分の在職証明書を提出してもらいます。
複数社の在籍期間を合計して10年あればよいので、場合によっては複数社から在職証明書を発行してもらわないといけない場合もあります。
そんなことをしていると、「以前勤めていた会社がすでに倒産していて在職証明書を発行してもらえないんですけど…」
とか「やめるときにもめたので依頼するのが難しいんですけど…」という場合も出てきます。
そういう場合もあきらめずに、とにかく「当時その会社に在籍していて、関連する業務を担当していたことを
証明できる書類がないか」確認してみてください。
例えば、雇用契約書、内定承諾書、給与明細書、異動通知書、…など在職証明書がそろわなくても、
他の書類で就労ビザがとれるケースもあります!
就労ビザをとるために、会社側が気をつけることとは?
さて、業務内容も学歴・職歴の要件もクリアしている!という場合は、その他の細かい条件をみていきましょう!
就労ビザをとるための雇用条件
就労ビザの申請をする際には、採用予定の外国人従業員と締結した「雇用契約書」または、
会社が発行した「労働条件通知書」を提出する必要があります。
そのときに気になるのが、
「雇用形態は正社員でないとダメなの?」
「契約期間は長期の方がいいの?」
「給料はどれくらいが適正なの?」
「社会保険はどうしたらいいの?」
といった点。
まずは、雇用形態ですが、正社員でないとダメというわけではなく、契約社員でも派遣社員でも就労ビザはとれます。
そこは自社で決めてもらってかまいません。
雇用期間も自由に設定してもらって問題ありません。
例えば、「雇用期間を1年と設定し、その後更新もありうる」という内容の雇用契約でも問題ありません。
長期の方が有利、ということもないので、「3カ月間」といった比較的短期の契約でも大丈夫です。
給与については、「日本人と同等額以上」と法律で定められています。
外国人という理由で日本人より安い給料で働かせないでね、という趣旨です。
そのため、同じような経歴の日本人を同じ業務内容・役職で雇った時と同じ給料(またはそれ以上)を出す必要があります。
(目安として、月額18万円以上はほしいとことです。)
社会保険については、日本人従業員を採用したときと同じと考えてください。
労働時間や休日についても、労働基準法に違反していなければ、自由に決めてもらって大丈夫です。
赤字が出ていても就労ビザはとれるか?
就労ビザを申請するときには、直近1期分の決算書(貸借対照表・損益計算書)を提出する必要があります。
そのときに、何を見られるかというと、外国人従業員を雇った時にきちんと給料を支払える財務体質かどうか?です。
そのため、
・赤字が出ている場合
・債務超過になっている場合
は注意が必要です。
赤字が出ていたり、債務超過になっている場合は、黒字にするための具体的な取り組みや見込みを説明する必要があります。
また、「新しく設立したばっかりの会社でまだ1期目の決算が終わっていない」という場合や
「会社を設立したけどまだほとんど動いていないので、決算書は出せるけどほとんど売り上げが上がっていない」
という場合は、事業計画書や今後1年分の収支計画書を提出すれば大丈夫です。
要は、実体のある会社ですよ、ということを証明する必要があるわけです。
個人事業主でも就労ビザはとれるか?法人と比べて不利にならないか?
法人化していない個人事業主の方でも就労ビザはとれます。
個人事業主の場合も、法人の場合と同じで直近1期分の決算書を提出する必要があります。
個人事業主だから就労ビザがとりにくい、ということはなく、きちんと売上・利益を上げていれば
個人事業主でも就労ビザはとれるのでご安心を!
就労ビザを取得するにはどうすればいいのか?
ここまで就労ビザを取得するための条件を見てきましたが、
ここからは実際に就労ビザを取得するためにはどうしたらいいのか?について説明していきます!
誰がどこに申請するのか?費用はどれくらいかかるのか?取得するまでどれくらいの期間かかるのか?
必要書類は?といったあなたの疑問にお答えします!
就労ビザを取得するまでのおおまかな流れ
就労ビザの申請をするときに、次の2パターンがあります。
- 海外に住んでいる外国人を呼びよせる場合
- 日本に住んでいる外国人を採用する場合
海外に住んでいる外国人を呼びよせる場合
【海外から外国人従業員を呼びよせるときの流れ】
1.入国管理局にビザ申請をする ※正式には「在留資格認定証明書交付申請」
●申請者:雇用主または行政書士や弁護士といった資格者
●申請先:会社(勤務地)の住所を管轄する入国管理局
●申請手数料:なし
●標準審査期間:1~3カ月(3カ月以上かかる場合もあります)
2.ビザが許可される(在留資格認定証明書が交付される)
3.在留資格認定証明書(原本)を海外に住む外国人従業員に送付する
4.海外にある日本領事館などで査証申請・取得
※1週間ぐらいで発給されることが多いです。詳しくは申請先に確認してください
5.来日!
海外から外国人従業員を呼びよせる場合は、会社(勤務地)の住所を管轄する入国管理局にビザの申請をします。
(正式には「在留資格認定証明書交付申請」という申請をします。)
申請できるのは、外国人ご本人か雇用主、または行政書士や弁護士といった資格者です。
申請するのに費用はかかりません。
審査の結果、許可になり在留資格認定証明書が交付されれば、原本を海外にいるご本人に郵送し、
海外にある日本領事館などで査証申請を行います。査証が発給されれば日本に入国することができます。
日本に住んでいる外国人を採用する場合
日本に住んでいる外国人を採用する場合は、すでになんらかのビザをもっているはずなので在留カードをみて、
ビザの種類と有効期限を確認してください。
「技術・人文知識・国際業務」ビザを持っていて、在留期間が3カ月以上残っている場合は、
入国管理国に対してすぐに手続きをする義務はありません。
ただし、この場合でも、「就労資格証明書」をとっておくことをおすすめします。
※「就労資格証明書」に関するページはこちら→中途採用時の味方!あなどれない就労資格証明書の威力
また、「技術・人文知識・国際業務」ビザを持っていて、在留期間が3カ月を切っている場合は、
できるだけ早くビザの更新の手続きをしましょう。
※ビザの更新に関するページはこちら→必見!就労ビザ更新手続きのすべてを教えます
「技術・人文知識・国際業務」ビザ以外のビザを持っている場合は、
あなたの会社で働く前にビザの変更手続きを済ませておく必要があります。
例えば、留学生を採用する場合は「留学」ビザをもっているはずなので、
「技術・人文知識・国際業務」ビザに変更してからでないと、外国人の方は就労することができません。
就労ビザへ変更するときのおおまかな流れは次の通りです。
【日本に住んでいる外国人のビザの変更申請をするときの流れ】
1.入国管理局にビザ申請をする ※正式には「在留資格変更許可申請」
●申請者:外国本人または行政書士や弁護士といった資格者
●申請先:外国人の方の現住所を管轄する入国管理局
※会社がある場所を管轄する入国管理国では申請できません。
●申請手数料:4,000円(収入印紙代)
※手数料は許可後に新しい在留カードをもらうときに支払います
●標準審査期間:1~3カ月
※3カ月以上かかる場合もあります
2.ビザが許可される(申請者のところにハガキが届きます)
3.入国管理局で新しい在留カードをもらう
4.就労開始!
就労ビザを申請するときにはどんな書類が必要なの?
入国管理局に就労ビザの申請をするときに必要な書類を説明してきます。
海外から外国人の方を呼ぶよせる場合も日本にすむ外国人を採用する場合も、必要な書類はほとんど同じです。
まずは雇用企業のカテゴリー分類を確認しましょう!
「技術・人文知識・国際業務」ビザの場合、雇用企業を規模などによりカテゴリー分類しています。
どのカテゴリーに属するかによって必要書類が違ってくるのでまずは自社がどのカテゴリーなのか確認しましょう!
カテゴリー1 | ●上場企業
●保険業を営む相互会社 ●日本または外国の国・地方公共団体 ●独立行政法人 ●特殊法人・認可法人 ●日本の国・地方公共団体の公益法人 ●法人税法別表1に掲げる公共法人 |
カテゴリー2 | 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上ある団体・個人 |
カテゴリー3 | 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く) |
カテゴリー4 | 1~3のいずれにも該当しない団体・個人 |
就労ビザの申請をするときの必要書類のリストはこちら
申請に必要な書類はカテゴリー1・2と3・4で大きく異なります。
カテゴリー1・2の場合は、必要書類は3・4と比べるとかなり簡略化されます。
【カテゴリー1・2の必要書類】
カテゴリー1 |
カテゴリー2 |
以下のいずれかの文書
① 四季報の写し ② 上場していることを証明する文書 ③ 設立許可書 |
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) |
≪共通資料≫ |
|
海外から呼びよせる場合:在留資格認定証明書交付申請書
ビザの変更をする場合:在留資格変更許可申請書 |
|
返信用封筒 ※在留資格認定証明書交付申請の場合のみ | |
申請人(外国人従業員)の方の証明写真
※3㎝×4㎝、3カ月以内に撮影したもの、1枚 |
|
専門士または高度専門士の称号をもっている場合は、それを証明する文書 |
【カテゴリー3・4の必要書類】
カテゴリー3 | カテゴリー4 |
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) | 以下のいずれかの資料
① 外国法人の源泉徴収に対する免除証明書 ② 給与支払事務所等の開設届出書の写し ③ 直近3カ月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書 ④ 納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料 |
≪共通資料≫ |
|
海外から呼びよせる場合:在留資格認定証明書交付申請書
ビザの変更をする場合:在留資格変更許可申請書 |
|
返信用封筒 ※の場合のみ | |
申請人(外国人従業員)の方の証明写真
※3㎝×4㎝、3カ月以内に撮影したもの、1枚 |
|
専門士または高度専門士の称号をもっている場合は、それを証明する文書 | |
以下のいずれかの資料
① 労働契約を締結する場合:雇用契約書 ② 日本法人である会社の役員に就任する場合:役員報酬を定める定款の写し、 または役員報酬を決議した株主総会の議事録の写し ③ 外国法人内の日本支店に転勤する場合または会社以外の団体の役員に就任 する場合:地位(担当業務)、期間及び報酬額を明らかにする所属団体の文書 |
|
履歴書 | |
以下のいずれかの資料
① 大学等の卒業証明書、成績証明書 ② (IT技術者)特定の試験または資格の合格証書または資格証書 ③ 関連する業務の実務経験を証明する文書(在職証明書など) ④その他に、日本語能力を示す文書や関連資格を保有していることを証明する文書(日本語能力試験の合格証など) |
|
雇用企業の履歴事項全部証明書 ※発行後3カ月以内のもの | |
雇用企業の会社案内書(パンフレット等) | |
直近の年度の決算文書の写し(新規事業の場合は事業計画書) |
(注)状況によっては上記の書類以外の書類が必要な場合があります。
万が一、不許可になってしまったら…
「就労ビザの申請をしたけど不許可になってしまった…」という場合も、
不許可の理由によっては再申請することができます。
まずは、入国管理局に行ってなぜ不許可になったのか理由を確認しましょう。
不許可になってしまったら申請者のところに通知書が届き、通知書に不許可の理由が記載されているのですが、
抽象的すぎてなんのこっちゃわからん!ということがほとんどです。
入国管理局の審査官に直接確認すれば、具体的に教えてもらえますので再申請する場合は必ず確認しましょう。
再申請のときはプロに任せたい!という場合は、不許可の理由を聞きに行くところから
行政書士などの資格者に同行してもらうことをお勧めします。
不許可になってしまう理由は本当にいろいろです。
・学歴(または職歴)の要件を満たしていない
・職歴をきちんと証明できていない
・業務内容が就労ビザに該当しない
・外国人従業員を雇うほどの業務量があるのかあやしい
・留学生がアルバイトの制限時間をこえて働いていた
などなど…
再申請する場合は、不許可理由を確認したうえで次の戦略を立てましょう!
このページでは、就労ビザの取り方について説明してきました。
ここまで読んで、「うちの会社で就労ビザをとれるかどうか判断できへん」
「必要な書類をもう少し具体的に教えてほしい」という場合は、是非当事務所の無料相談をご利用くださいね^^
また、外国人従業員の方が無事に就労ビザを取得して、あなたの会社で働くことになれば、
次に気になるのはこんなことだと思います。気になる点があればチェックしてみてくださいませー。
・就労ビザを取得した外国人従業員が退職することになったら…
神戸大学国際文化学部卒業後、大手電機メーカーにて海外営業・マーケティング業務を経験。
育児休業中に行政書士資格を取得し、2015年12月に独立。
開業当初から入管業務(ビザ申請)に特化し、現在では年間500件以上の相談、100件以上の申請を行う。